| そのご18歳で、空海は最初の著作 「三教指帰(さんごうしいき)」
を書く。 戯曲構成で書かれた日本最初の 「思想小説」 である。 物語は儒教・仏教・道教の三教の代表としての3人の登場人物を中心にして展開する。
叔父の阿刀大足をモデルにした 「亀毛先生」 は儒教の、「虚亡隠士」 は道教の、空海自身をモデルにした 「仮名乞児(かめいこつじ)」
は仏教の代表である。 乞児とは食を乞うて身を養いつつ法を得ようとする小僧をいう。 仮名乞児のありさまといえば、本ものの乞食もあざわらうほどであって、大学をやめてから山林をうろつきまわっている空海自身をあらわしている。
紙子を着、茅で編んだござをかかえ、背中には椅子を背負い、足にはわら草履をはいている。 食を乞うための木の鉢を左のひじに懸け、馬の尻管のような数珠を右の手に懸け、頭といえば銅の盆のようであり、顔は瓦製の鍋のように黒ずみ、栄養の摂取がゆきとどかぬために色つやがまるでない。
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