Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
Turn

真理へのアプローチ法〜数学的な形式と直観的な形式
 第2093回 「太始と太終の闇〜宇宙の始まりと終わり」 では現代宇宙物理学の 「ビックバン宇宙論」 と弘法大師空海の等価的予見について論考した。 ではその予見はどのようにしてもたらされたのであろう。 事の経緯は以下のようであった。
 真理を求める津々浦々の深山幽谷での修行はやがて高知県室戸岬にある 「御厨人窟(みくろど)」 という太平洋の荒波を望む洞窟に行き着いた。 当時19歳だった空海はその 「御厨人窟」 で 「虚空蔵求聞持法」 の厳しい行に入る。 虚空蔵菩薩は 「智恵」 と 「記憶」 の菩薩であり、虚空蔵求聞持法を修めれば、八万四千あると言われる経典の全てを記憶し智恵を授かるというものである。 その修法とは真実の言葉(真言)を定まった期間内に百万回唱えるというもので、最低でも1日に1万回という過酷な行である。 その修行の中で空海は虚空蔵菩薩の化身である光り輝く明星(金星)を口から体内に迎えるという超常現象を体験することで 「すべてを悟った」 と言われている。 19歳といえば、あらゆる予見が激しく交錯する年齢でもある。 その中で現代の天才物理学者が時として与えられる予見と同じに、空海自身がその等価的予見に出逢ったとしても何ら不思議ではない。 ただ表現方法が現代科学が多用する 「数学的な形式」 ではなく、虚空蔵求聞持法に導かれた 「直観的な形式」 であっただけである。 宇宙の真理にアプローチするにおいて、その方法に優劣の差異は存在しない。 重要なことは、得られた真理の 「何たるか」 だけである。
 以下蛇足ながら、虚空蔵菩薩には忘れ得ぬ記憶がある。 その経緯は 信州つれづれ紀行 で訪れた長野県下諏訪町で出逢った 「万治の石仏」 で描かれている。 それは記念すべき 第1回 でのことであった。 空海ともども不可思議な縁を感じざるを得ない。

2026.07.20


copyright © Squarenet