Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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歴史的場面構築
 歴史的場面構築とは直観的場面構築の対極にある場面構築メカニズムである。2つの場面は互いに相対性と相補性を具備した「Pairpole」を成している。直観的場面とは「意識世界に構築された場面」であり、歴史的場面とは「物質世界に構築された場面」である。また直観的場面構築メカニズムと歴史的場面構築メカニズムのメカニズム構成は互いに等価的である。
 歴史的場面構築メカニズムはかってにバラバラに存在していた事実(要素)がある時に関連性(連鎖)をもち事件(構造)に発展(反応)し、社会に影響(目的)を及ぼす物質世界での場面構築メカニズムである。関ヶ原の戦役も、第2次世界大戦も、ナチスドイツのホロコーストもこのメカニズムが構築した「歴史的場面」である。これらの歴史的場面がいかように構築されたかは歴史書の記述を読めば瞭然と了解されよう。
 直観的場面構築の基本要素は「意識」であり、歴史的場面構築の基本要素は「行動」である。東洋思想の陽明学の主題は「意識と行動の一致」を求める「知行合一」である。意識と行動は別々のものではなく、本来は「一体的」な存在であるとする。かかる陽明学からすれば直観的場面と歴史的場面は別々の場面ではなく「一体的な場面」である。
 直観的場面と歴史的場面は万物事象の「表裏」であり、直観的場面は歴史的場面を投影し、歴史的場面もまた直観的場面を投影する。
 言うなれば意識メカニズムが投影した直観的場面と行動メカニズムが投影した歴史的場面は互いに相対的であり相補的である。関ヶ原の戦役は、西暦1600年の日本列島に生きていた人々の意識メカニズムが行動メカニズムに投影した歴史的場面であり、ナチスのホロコーストは当時のドイツに生きていた人々の意識メカニズムが行動メカニズムに投影した歴史的場面である。
 世に怖ろしきは実に「意識」することであり、その意識メカニズムが直観的場面を構築し、行動メカニズムに投影して歴史的場面を構築してしまうのである。「思いは実現する」とは、巷間よく言われることである。我々は正しく意識する必要がある。なぜなら正しい意識だけが、正しい行動を発生させ、正しい歴史的場面を構築するからである。

2002.10.16


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