Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知のワンダーランドをゆく〜知的冒険エッセイから
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何処やらに 鶴の声聞く 霞かな
 量子世界の波動性と粒子性の対比は幾何学世界の面と線の対比と相似する。面の世界と線の世界の思索は本稿、第489回「線の旅人と面の旅人」、第490回「野に遊ぶ」で記述した。
 面の世界は波動性の世界であり、線の世界は粒子性の世界である。面の旅人は街道をはずれ野に遊ぶ旅人であり、霞のように広がっていて、どこにもいてどこにもいない旅人である。線の旅人は街道を行く旅人であり、宿場で待てば必ず出会える旅人である。
 一昨年(2011年)、「ほかいびと〜伊那の井月」が映画化された。幕末から明治にかけて伊那谷を放浪した俳人、井上井月の謎に包まれた生涯に迫る伝記映画である。井月その人については信州つれづれ紀行、第322回「六道の堤 追憶の井月」に詳しい。その六道の堤に立つ句碑は井月「辞世の句」である。
何処やらに 鶴の声聞く 霞かな (どこやらに たずのこえきく かすみかな)
 波動性の世界に生き、面の旅人として野に遊んだ孤高の俳人、井月の面目躍如たる絶筆である。
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