Linear ベストエッセイセレクション
宮本浩次の風景
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夜明けのうた
 世界から未来としての明日が失われようとしている。 それはかなり前から始まっていたように思われるが、はっきりとした潮流となって現れてきたのは新型コロナウイルスがこの世界の片隅で蠢きだした時からであろう。 その感染拡大はパンデミックとなって世界中に蔓延。 それまでの生活を一変させてしまった。 かかる凶事が自然自らの突然変異から発生したのか? それとも人類自らが引き起こした不祥事から発生したのか? 現時点では 「不明」 である。
 さらにこの凶事がいつになったら終息するのかの目途も立っていない。 まだ始まりなのか? それとも今が頂点なのか? もうすでに終息に向かっているのか? その予測は株価の動向のように見極めは困難である。 経済は低迷を続け、連鎖が切断された社会は人間を孤立させ、精神的抑圧を加え続ける。 新しい明日はやってくるのか? 現時点ではこれもまた 「不明」 である。
 以下は、ロックバンド 「エレファントカシマシ」 のボーカリスト宮本浩次が新型コロナウイルスによる活動休止期間中に作ったソロ曲 「夜明けのうた」 である。 本人曰く。 「夢見る旅人が今届けたい “珠玉のバラード” 決意の曲である」 と。 明日が失われようとしている世界の中で 「新しい明日」 は必ずやってくると 「なりふりかまわず」 子供のような純心をもって絶唱する姿は聞く者の琴線に響いて熱く胸をうつ。
 
夜明けのうた / 作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次

夢見る人 わたしはそう dreamer 明日の旅人さ
月の夜も 強い日差しの日も 歩みを止めない
忘られぬ思い出も 空のこの青さも
ぜんぶぜんぶこの胸に抱きしめたい
わたしの好きなこの世界

時に悲しみに打ちひしがれて
ふと忘れたふりしてた涙が 頬をつたうよ
でも町に風が吹き 明日がわたしを誘いに来る
ああ ようこそこの町へ わたしの住む町へ

ああ 夜明けはやってくる 悲しみの向こうに
ああ わたしも出掛けよう わたしの好きな町へ
会いにゆこう わたしの好きな人に

夢見る人 わたしはそう dreamer 明日の旅人さ
悲しいときもうれしいときでも 歩みを止めない ああ

きみとふたり歩いた色づく並木道
光の中ふたり包まれ このまま永遠に
でも町に風が吹き ふたりを明日へといざなう
ああ さようなら わたしの美しい時間よ

ああ 夜明けはやってくる やさしさの向こうに
ああ わたしも旅立とう あたらしい明日に
会いにゆこう あたらしいわたしに

ああ 町よ 夜明けがくる場所よ
そしてわたしの愛する人の 笑顔に会える町よ
ああ 心よ 静かにもえあがれ
風がいざなうその先の あたらしい明日に
会いにゆこう 未来のわたしに
会いに行こう わたしの好きな人に
会いにゆこう あたらしい世界に
 
 NHK東京児童合唱団で歌っていた少年も今や54歳である。 だが歌への一途な思いは少しも変わることはない。

2020.10.12


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