Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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無敵の人〜社会的敗者の無敵
 「無敵の人」 は依って立つ社会的な階層で 「2つの無敵」 に分けられる。 ひとつは、前回で述べた 「社会的勝者としての無敵」 であり、他のひとつは 「社会的敗者としての無敵」 である。
 社会的敗者は社会的に失うものが何も無いため、犯罪を起こすことに何の躊躇もない。 だが社会的勝者は逮捕されると職を失ったり、社会的信用を失ったりするため、犯罪行為に手を染めることを躊躇する。 だが社会的敗者は元から無職で社会的信用も無いため、逮捕されることがリスクにならない。 それどころか 「刑務所もそんなに悪いとこじゃないのかも」 程度の環境変化にしか過ぎなくなる。 死刑になったり、逮捕されたりすることを怖がらない人たちは、まさに 「人倫から解き放たれた」 最強の 「無敵の人」 たり得る。
 「無敵の人」 というネットスラングを創出した2ちゃんねるの西村博之氏は 「かくして彼らは欲望のままに野蛮な行為に手を染めるようになり、そしてそのような人間を制限する手段を社会は持っていない」 と警鐘を鳴らした。 社会にとっての最大の敵とは、かくなる 「人倫から解き放たれた社会的敗者」 がたどる 「無敵の人」 である。 こうなると、どちらが勝者で、どちらが敗者なのかさえ定かではなくなる。 それは勝ち組と負け組に峻別する現代社会がやがて将来するであろう深刻な 「危機の実相」 である。
 だがそんな危機など 「どこふく風」 とばかりに、ときの為政者たちは 「村内の権力闘争」 に明け暮れている。 「今そこにある危機」 とはまさにそのことである。

2025.07.31


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