Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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大いなる仮説
 情報化時代の到来とともに始まった 「世界の不確実性」 については 「不確実性社会の行き着く先」 でさまざまな視点から論考している。 その末尾に配した 「大いなる仮説」 でその帰結を私は以下のように書いた。
 世界の不確実性は結局のところ、急激なエントロピ増大に帰因する。 だが 「なぜゆえにエントロピは増大し続けるのか」 という不可解は依然として解明されないままである。 解明に向けて着目すべきは 「エントロピの増大にはエネルギを必要としないがエントロピの減少にはエネルギを必要とする」 という特異の性質についてである。
  エネルギを数式化したものとしては、相対性理論を構築したアインシュタインの 「E=mc2」 がある。 原爆開発の基礎となった悪魔の方程式と呼ばれる数式である。 この数式とエントロピの増大の法則とを繋げる直接的な因果は見いだせない。 であれば、エントロピの増大の法則は、エネルギを必要とする 「物質世界の現象」 を述べたものではなく、エネルギを必要としない 「意識世界の現象」 を述べたものではないかという仮説が想定されることになる。 単純な例証で示せば以下のようになる。
 放置された部屋が雑然としてくるエントロピの増大の過程において、エネルギを必要としないことは物質世界の現象として素直に了解されることである。 逆にその雑然とした部屋を整理整頓するエントロピの減少の過程において、エネルギを必要とすることもまた物質世界の現象として素直に了解されることである。 これらは論証するまでもない 「当然至極の事実」 である。
 この仮説が正しければ、エントロピの増大がもたらす不確実性社会の行き着く先に、一筋の光明が見えてくる。 曰く。 善も悪も、希望も絶望も、繁栄も衰退も、禍も福も ・・ また想い方次第である。 つまり、意識世界では何をどう想おうが自由であって、物質世界のように時間や空間に拘束されない。 だが意識世界(仮想世界)が何をどう想おうが自由でエネルギが消費されないからといって、想ったことを物質世界(現実世界)で実現しようとすれば、時間と空間に拘束され、エネルギが消費されることを忘れてはならない。 だが情報化社会の根源が我々自身が 「何をどう想うか」 にかかっていることを自覚するだけでも 「大いなる救い」 となろう。 「不確実性社会の命運」 はそこにかかっているのであるから。

2025.04.01


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