Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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動と静の相対性
 かって、外にでて動きまわる営業マンと内にいて動きまわらない営業マンの優劣を論じたことがある。 常識的には、外で動きまわる営業マンが推奨される。 だが顧客からみると、いつ電話しても 「いない」 動きまわる営業マンより、いつ電話しても 「いる」 動きまわらない営業マンの方が推奨されるであろうというのがその主旨であった。 言うなればそれは 「営業の相対性理論」 である。
 視点をかえれば、外にでて動きまわる営業マンとは、社会に動かされている営業マンの姿であり、内にいて動きまわらない営業マンとは、社会を動かしている営業マンの姿である。 その主体性において、またその効率性において、内にいて動きまわらない営業マンの方が優っている。
 翻って、この世の万物事象(動植物)の胎動を眺めれば、「動きまわる動物」 と 「動きまわらない植物」 に大別される。 「動きまわる動物」 は 「動きまわる営業マン」 に相似し、「動きまわらない植物」 は 「動きまわらない営業マン」 に相似する。 論理を拡大すれば、「成長と競争のために動きまわる人間像」 とは 「動きまわる営業マン」 の姿に相似し、「縮小と共生のために動きまわらない人間像」 とは 「動きまわらない営業マン」 の姿に相似する。 この動きまわらない人間像こそが 「時計がゆっくり回る社会での人間像」 に他ならない。
 コンピュータネットワークが地球表面にくまなく張りめぐらされた現代社会では、あるいは 「植物的人間像」 が推奨されることになるのかもしれない。

2023.12.13


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