Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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地獄の沙汰も心次第
 「地獄の沙汰も金次第」 という言葉は、どうやら室町時代の俳諧集の中にしてすでにみられていたようであるが、翻って現代社会を眺めれば、これほど的を射た風刺語は他に見あたらない。 今、自民党派閥の裏金疑惑が世相を席巻しているが、「国政さえも金次第」 ということであろうか? さてさて、無気力と自信喪失に陥ってしまった 「現代社会を再生する道」 はどこにあるのであろうか?
 言わずもがな、それは 「成長と競争の物質社会」 から 「縮小と共生の精神社会」 への転換である。そのためには、時間の針をぐるぐる回すのではなく、ゆっくり回すことである。 できれば古代で使用されていた 「日時計」 あたりが最適かもしれない。 もって、「地獄の沙汰も心次第」 となれば、もはやいうことはないのだが。
 かって、長野県上水内郡小川村大洞高原にある小川天文台を訪れたことがある。 以下は 「星と緑のロマントピア」 からの抜粋である。
 高山寺を過ぎ、かっては戸隠道と呼ばれた街道をさらに北上すると小川天文台が立つ大洞高原に至る。 このあたりは 「星と緑のロマントピア」 と呼ばれている。 ロマンとユートピアの合成語であろうが、都会の喧噪から遙かに隔たり、透明な空気が流れる山村の頂にあってみれば、星を見るには理想的な空間であろうし、夢はロマンに満ちたものになるのは必然であろう。 天文台に至るささやかな広場に備えられた 「日時計」 は午後 3時を示していた。 時刻表示の目盛りが午前 6時 〜 午後 6時 までの昼間 12時間 の時計である。 あとの夜間 12時間 は寝てしまうので必要ないということであろう。 現代人のように夜も眠らないで活動することなど、この時計を使った当時の人々には考えも及ばないことであったに違いない。 カットは星と緑のロマン館前の駐車場で、訪れた人々が光と戯れる姿を前にしての北アルプス連峰北部の眺望である。 (2011.12)
星と緑のロマントピア / 長野県上水内郡小川村大洞高原

2023.12.11


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