Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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狂った惑星
 「眠らない惑星」 と 「笑えない惑星」 を書いたのは2019年2月のことであった。 抜粋すると以下のようである。
眠らない惑星
 インターネット社会では、さまざまな情報が地球上を所狭しと猛烈な速度で駆け回る。 物理的な世界と異なって情報世界は距離の制約がないだけにその速度は 「無限大」 に近づいていく。 かって高度経済成長下での東京は 「眠らない街」 と呼ばれたが、今や地球そのものが 「眠らない惑星」 になってしまったようである。 よもや達成されることはないと思っていた 「世界はひとつ」 という標語は、今まさに現実になろうとしている。 それは人類がもった歴史の中では空前にして未曾有の出来事である。 かくなる達成が 「何を意味するのか」 を考えなければならないのであるが、達成を成し遂げた当の人類そのものが事の次第を量りかねている。達成された世界は 「豊饒の大地」 なのか? それとも 「球形の荒野」 なのか? 問えども眼前に広がる空漠の大地は何もこたえてはくれない。
笑えない惑星
 インターネットによって達成された 「標準化された全体」 とは、言うなれば可もなく不可もない白紙のような存在である。 それは化石のように味気ない。 そのような化石を所有したと自慢してみても、心はすきま風が吹きぬけるだけで、何ら満たされることはない。 だがそれを分かってか分からずか 「かくなる所有」 を自慢する 「裸の王様」 があとをたたない。 これでは地球は 「眠らない惑星」 どころか裸の王様が所狭しと闊歩する 「笑えない惑星」 に逸してしまう。
 そして現在はと言えば、それは 「狂った惑星」 に変じようとしている。 ロシアとウクライナの戦争は、中東でのユダヤとアラブの戦争へと移行し、その他の地域紛争に転化しようとしている。 経済発展に端を発する地球環境の悪化があきらかになっても歯止めをかけることができない。 人類の愚かさは日毎に増大して存続の臨界点に向かってまっしぐらである。 「球形の荒野」 は 「眠らない惑星」 と 「笑えない惑星」 を経て、遂には 「狂った惑星」 へと尽きてしまうのか? 暗澹たる思いやまずである。

2023.10.18


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