Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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考えること ・ 感じること
 考えることは論理性、合理性を基とする。 しかして得るものは 「納得」 である。
 論理性や合理性を数学的に表現すれば、数式をもって解に至る 「代数学」 に相当する。 代数学は論理的認識に基づくため 「左脳派」 に好まれる。 大別すれば 「デジタル的」 である。
 感じることは感受性、情緒性を基とする。 しかして得るものは 「感動」 である。
 感受性や情緒性を数学的に表現すれば図形をもって解に至る 「幾何学」 に相当する。 幾何学は直感的情動に基づくため 「右脳派」 に好まれる。 大別すれば 「アナログ的」 である。
 現代社会はデジタルが主流なため 「考えること」 が優先され、アナログ的な 「感じること」 は劣後とされる。 だが考えることのバックグラウンドである論理性や合理性は 「時間の経過」 とともに、次々と修正が施され変化していく。 換言すれば、得られた論理性や合理性は、それとは 「逆の論理性や合理性」 によって 「改変され得る」 のである。 したがって、考えれば考えるほどに論理性や合理性は飛躍し変質していく。 曰く。 論理性や合理性は 「無限に進歩」 するか、あるいは 「無限に退歩」 するかの 「宿命」 を帯びているのである。
 アクション俳優であり哲学者でもあったブルースリーの名言は幾たびか本稿でとりあげてきた。 その中でも最も有名な 「Don’t think, feel (考えるな、感じろ)」 は感じることの大切さを主張するとともに、それに続けた 「何かについて考えすぎると、それを成し遂げることは到底不可能である」 の解説をもって、上記した 「論理性や合理性は逆の論理性や合理性によって改変され、考えれば考えるほどに論理性や合理性は無限に変質して進歩するか、あるいは退歩するかの宿命を帯びている」 という状況の核心を見事に貫いている。 かかる危機的状況を救う唯一の道が 「感じること」 であると、ブルースリーは言いたかったのではあるまいか? でなければ 「考えること」 一辺倒の現代人の生活は、いずれ精神障害の奈落に陥ってしまう。 であれば、「Don’t think, feel 」 は名言というより 「警告」 ととらえたほうがよさそうである。

2023.09.28


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