Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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時空を操る者
 この世は物質的存在によって動いているようにみえて、その実は精神的存在によって動いている。 物事の勝敗は物理的な力によって決まるようにみえて、その実は精神的な力によって決まる。
 「われ、いまだ木鶏(もっけい)たりえず」 とは69連勝を続けていた天下無双の大横綱、双葉山が安藝ノ海に破れたときに師と仰ぐ安岡正篤に 「この一言」 をもってその敗因を伝えたと言われる。 木鶏とは、「荘子」 に収められている故事に由来する言葉で、木彫りの鶏のように全く動じない闘鶏こそが最強であるとする意である。 双葉山はその境地に至れなかった己を戒め、さらなる精進を誓う気概を示したのである。 荘子は道を体得した人物とは他者に惑わされること無く、鎮座しているだけで衆人の範となる者のことであることを 「木鶏」 の喩えをもって教えたのである。
 「時空を操る者」 とは、かくこのように 「己自身の精神を操る者」 のことである。 乱れた心をもってしては、いかなるものにも勝つことはできないのである。

2022.07.13


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