Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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国政選挙の争点
 以下の2編は安倍政権によるアベノミクスと呼ばれた経済政策で掲げられた 「経済成長による雇用拡大」、「1億総活躍社会の実現」 等々が声高に喧伝されていた当時に書かれたものである。 そして現在。 政界は2022年7月10日投開票の参議院選挙に向けて、これからの日本の未来像について 「喧々諤々の論戦」 を交わしている最中である。 「故きを温ねて新しきを知る」 のことわざのごとく、かっての政策を省みるのも一考であろう。
第968回 「人間失格」
 人類は機械を開発して肉体的労働から解放され、コンピュータを開発して事務的労働から解放され、そして今、人工知能を開発することで、知的労働から解放されることをめざしている。 しかしながら、肉体的労働、事務的労働、知的労働から解放された人間に、いったい何が 「のこされる」 というのか? リストラも限りなく追求すると、ついには自らをリストラしてしまう。 続ければやがては 「審判の日」 を迎え 「人間失格」 の烙印を押されかねない。 「人間性の解放とは 即ち 人間性の収奪である」 という皮肉な自己矛盾である。 かような矛盾を放置した 「1億総活躍社会の実現」 とは、いったい何を意味しているのであろうか? 言うなれば、人間としてのすべての労働を奪われた人々にむかって 「何を どのように 活躍せよ というのか」 ということである。 (2016.09.27)
第969回 「矛盾の構図」
 世論調査における安倍政権に期待する政策の第1位は 「経済の回復と成長」 とする民意は終局において自虐的な帰結に至る。 なぜなら経済が回復し成長しさえすれば、雇用が回復するのかどうかはわからない。 経済は経済的合理性で運営されているのである。 それは経済的利益の最大化が目的であって、雇用の拡大が目的ではない。 換言すれば、雇用の拡大は手段であって、経済的合理性に合致する場合においてのみ達成されるものである。 雇用の拡大より他に効果的な手段(例えば事務のコンピュータ化や製造の自動化等)があれば達成されないであろう。 どうしても雇用の拡大を目的とするならば、経済的合理性を手段化することである。 雇用の拡大のためには経済的利益を犠牲にするという政策であるが、このような政策が現実的に可能かどうかは疑問である。 なぜなら経済的合理性は現代社会の中では揺らぐことなき絶対的基準となっているからに他ならない。 以上の論旨は、前掲の 「人間失格」 における社会システム変遷にともなう人間性喪失の視点を現代社会の基盤である 「経済的合理性」 から述べたものである。 矛盾の構図はともに相似する。 アベノミクスが掲げる 「経済成長による雇用拡大」、「1億総活躍社会の実現」 等々の政策はこれらの矛盾を放置しては奏功することは期待できない。 (2016.09.28)
 以上の矛盾の構造は依然として解決されず今も手付かずのままである。 それに加えて日本を取りまく環境は 「異常気象」、「温暖化」、「円安」、「物価高」、「ロシアのウクライナ侵攻」 等々、日々悪化の一途をたどるばかりである。 もはや 「待ったなし」 。 目先の小手先に関わっている暇などどこにもないようにみえるのだが ・・ どうであろう?

2022.06.30


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