Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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止観のすすめ〜虚の思考とは
 情報化社会ではめまぐるしく頭を回転させ続けひとときも休止する暇もない。 高性能のコンピュータでさえ過酷に稼働させ続ければダウン(故障)してしまうのは理の当然である。 それ以上の性能を誇るとされる頭脳をもってしてもそれは不可避であって、限界に達すればいずれはブレイクダウンしてしまう。 ヒートアップした頭脳はクールダウンしなければならないのである。
 仏教で言うところの 「止観」 とは、そのクールダウンのことである。 止観とは禅定により心の動揺を払って一つの対象に集中して正しい智慧を起こして仏法を会得することである。 禅定とは沈思して雑念を去り、絶対の境地に達することをいう。 また編集工学研究所、所長の松岡正剛はその著 「空海の夢」 の中で止観の働きを以下のように語っている。
 進化する頭脳の救済法として ・・ 即身の核心である直観と方法をいかに融合させるかについて ・・ 直観を 「場面集(インターフェイス)」、方法を 「回路群(サーキット)」 と位置づけ、融合は 「編集(エディトリアル)」 によって成される ・・ だが研ぎ澄まされた直観(場面集)も確かな方法(回路)で制御されなければ、その制御系(回路)は発振(共振)してダウンしてしまう。 融合を安全に実現するためには、走り出した直観(場面集)を停止したり再起動したりする機能がその方法(回路)に内蔵されていなければならない。 間断なく切りかわる場面の切り換え能力をあえていったん休止させる制御回路の付加である。 これ即ち 「止観」 の働きである。
 私流に還元すれば、止観とは 「観想しないこと」、さらに言えば 「考えない」 ことである。 だが頭脳を空っぽにすることは至難の業である。 「宇宙は真空を嫌う」 と言われる。 真空は何かを充填しなければおけない空間なのである。 理論物理学では 「真空は虚のエネルギ」 で満たされているとされる。 それに倣えば、人間の頭脳もまた 「虚の思考」 で満たすことで止観(クールダウン)が達成されるのかもしれない。 虚の思考とは、実の思考の裏にある思考なのであろうが、それが何なのかはさらなる探求を要する。

2022.03.25


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