Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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里山とは何か?
 近頃とみに 「里山」 が注目されるようになった。 「里山」 を 「山里」 と解していた私は、里山を特集したテレビ番組を観て、里山が生活の糧としての 「水田」 と、薪を採るための 「雑木林」 と、生物連鎖の豊饒を育む 「小川」 から構成されている地域を指す言葉であることを知った。 山里が単に 「山裾の里」 を指す言葉であるとすれば、その違いは天と地ほどの差になる。 極論すれば、たとえ山がなくとも上記したような構成が満たされれば、それは立派な 「里山」 ということになる。
 千坂げんぽう は生物の多様性を創出し維持するための実践として、日本で初めての 「樹木葬」 墓地を18年前に岩手県一関市の中山間地で始めた人物だが、「さとやま民主主義〜生き生き輝くために」 の著者としても知られている。 「さとやま民主主義」 とは、さまざまな生物が関連し合って形成される里山の生態系を、地域と基本的人権を守る民主主義になぞらえて、著者なりにとらえた言葉であって、これからの時代を地域で生き続けるために何が必要かを、僧侶である自らの視点で提言したものである。
 里山はかって日本の津々浦々、いたるところにあった世界である。 そこには様々な生きものが生息していて人間との共生をはたしていた。 その世界は人流の都会への一極集中にともなって、いつしか失われていったのである。 だが時代はめぐる。 人間にとっての 「ふるさと」 である里山へ回帰する時代がようようやってこようとしているのだ。

2022.03.16


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