Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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神は死に、しかるのち、心が死んだ
 かって哲学者ニーチェは工業社会が発展していく中で 「神は死んだ!」 と叫んだ。 そして今度は情報社会が発展していく中で、人は 「心は死んだ!」 と叫ぶことになるのかもしれない。 神が死に、心が死んだあとにのこされる世界とはいったいいかなるものなのであろうか?
 第721回 「社会学的インフレーション理論」 ではその顛末が書かれている。 今にして思えば現代人に精神的欠乏をもたらした 「大いなる錯覚」 がこの頃にしてすでに予感されていたのかもしれない。 社会学的インフレーション理論は成立の可能性を暗示したものであり、その成立がはたして我々人間にとって幸せなのかどうかは熟慮を要するとした論考である。 書かれたのは2013年3月のことであるが昨日のように思われる。
 しかしてその末尾で私は、「物理学的インフレーション理論」 が予測する 「宇宙の終末」 が、限りなく膨張する中で温度は低下していき、やがてエネルギ密度は均等となり、「熱的死」 と呼ばれる、動くものなく物音ひとつしない 「静かな暗闇の世界」 であると同じに、「社会学的インフレーション理論」 が予測する 「社会の終末」 が、戯言(たわごと)に戯言を限りなく重ねていくうちに大戯言となって飽和し、やがては何を言っても意味をもたない、「心的死」 と呼ぶような、虚無的で無感動な 「静かな暗闇の世界」 であるなどとは想像したくないと述懐している。 畢竟如何。

2021.12.29


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