Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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民主主義とは何か?
 東京2020オリンピック、パラリンピックが閉幕し、コロナ禍が沈静してきたとみるや、今度は自民党総裁選挙の喧噪で世相は右往左往の大騒ぎである。 忘却は人の世の常であるが、それをあからさまにみせられるとほとほと興ざめしてしまう。 熱しやすく冷めやすいは日本人の伝統的習性ではあるが、日々生起する事件がテレビの 「ワイドショー番組」 の登場とともに 「ワイドショー化」 していったこともまたその習性に拍車をかけさせている。 ワイドショーは今では 「情報番組」 と銘打たれ、その軽薄さは意味深長に装飾されてはいるが、通底で流れる風潮は覆い隠せるものではない。 垂れ流されるかくなる情報を一方的に見せつけられる聴衆はいつしか 「自ら考える」 こともしなくなる。 それはある種のマインドコントロール(洗脳)の過程である。 自己の判断力を放棄した人々による民主主義とはいったい何であろうか?
 民主主義の基本理念が 「多数決」 であることは誰しも認めるところであろう。 だがそれもしっかりした自己の善悪、真偽に基づいた判断力があってのものであって、それが失われた多数決では民主主義は確保されない。 表向きは民主制を装っても本質では君主制や独裁制、その他の専制主義に変質してしまう。
 米国フィラデルフィア生まれのノーム・チョムスキーはプラトン、フロイト、聖書と並んで最も引用回数の多い著者であり、「生きている人の中でおそらく最も重要な知識人」(ニューヨーク・タイムズ) と形容され 「現代のソクラテス」 と称される哲学者である。 彼がとらえている現代民主主義の陥穽を私の思うにまかせて抽出すれば以下のごとくである。
「アメリカが民主主義を広めるという名目のもとに行っている、自分の言うことを聞く抑圧的な政府を支援して内実では民主主義を阻止するというような他国への軍事、経済介入はテロリズムそのもである。 そのお先棒を担いでプロパガンダを煽っているのがアメリカのマスメディアであり、特にエリートは常に体制の提灯持ちになりやすい」
「エリート大学は最も従順な生徒を選択して体制順応者を生産する」
「偽善者とは他の人に当てる物差しを自分にも当てることを拒否する者のことである」
「民主主義では個人の良心が多数派の意志の下に従属されてしまう」
「もしあなたがジョージ・ブッシュをインタビューして、真実についてどう考えるか聞いたなら、おそらく真実は素晴らしいもので、何よりも強く、自分は真実というものに挺身するつもりだと言うでしょう。 ひょっとするとヒットラーも同じように言うかもしれません。 政治的な指導者というのはそういうふうに言うものです。 侵略者はいつだって気高い志に燃えているのですから」
 アメリカの覇権主義を厳しく批判。 エリートの偽善を糾弾し、民衆の能力を信頼するその基本姿勢にはぶれがない。 ひるがえって昨今の日本の窮状を鑑みれば、いたるところに偽善者が満ちあふれ、形だけの民主主義を掲げてその実は 「集団的無責任体制」 に逸している。 その体制を支える個々人は今、自らの頭で深く問わなければならない。 民主主義とは何ぞや? と。

2021.09.17


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