Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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完全矛盾からの脱出法
 決断するにおいては誰しも躊躇し戸惑うものである。 未来がしかと見通せない 「未知なる世界」 であってみれば、それは当然な仕儀である。 だからといっていつまでも決断を渋ってばかりいては現実世界(この世)で生きていくことはできない。 ことの成否にかかわらず決断しなければならない。
 必要なことはその決断の 「依って立つ基準(根拠)」 である。 その基準は時代によっても異なろうが、現代社会で考えれば、その決断によってもたらされる 「経済的な利害損得」 や 「科学的な合理性」 などがあげられよう。 現代社会の価値観からすれば大半の決断はこの 「2つの基準」 にて一件落着するのではあるまいか。 だが往々にして、かかる基準ではいかんともしがたい決断がある。 あれが立てばこれが立たず、これが立てばあれが立たないような複雑な案件である。 例えて言えば、コロナ禍における感染対策と経済対策のような 「二律背反の課題」 があげられる。 科学的な合理性にしたがって感染対策を優先すれば、経済的な利害損得にしたがった経済対策が成り立たず、逆に経済的な利害損得にしたがって経済対策を優先すれば、科学的な合理性にしたがった感染対策が成り立たない。 言うなれば 「完全矛盾」 である。
 だが完全矛盾だからと言ってもそれは経済学と科学という 「2つの基準」 の間でのことであって、有効な判断基準を他に探し出せば矛盾は解決することである。 経済学や科学では解決しないと言うのであれば、社会学もあれば、哲学もあれば、心理学もある。 探せば他に多くの基準も見つかるであろう。 手をこまねいて思考停止していては何事も解決しない。 いわんや未来など望むべくもない。

2021.07.21


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