Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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ローカル世界への回帰
 世界がグローバルからローカルへの変節点を迎えている現在。 その胎動をしかと見分けることは次なる未来にとって必要欠くべからずの重要課題である。 グローバルとローカルをサイズの概念で言えば大きな世界と小さな世界ということになる。 これまでの国際社会ではこのサイズの概念に従って、より多くの価値を大きな世界においてきたが、これからはより多くの価値を小さな世界におくことになろう。
 第1520回 「私の世界」 では、ロシアの文豪、トルストイの 「過去も未来も存在せず、あるのは現在という瞬間だけだ。 誰もが世界を変革することを考える。 だが誰も己を変えようとは考えない。 芸術とは、人が己に起こった最高のまた最善の感情を他者に伝えることを目的とする人間の活動である」 という言葉を俎上にして、ローカルとしての 「私の世界」 の本質を以下のように述べている。
 過去も未来もない現在だけの世界が 「私の世界」 であれば、対立する全体の世界は 「あってもなくてもいい」 ような世界へと一変してしまう。 トルストイはあってもなくてもいいような世界を変革しようとするなど 「大いなる徒労」 であるとし、為すべきは 「私の世界の変革」 であることを断言したのである。 そのうえで自らは小説家として 「私の世界」 に起こった最高、最善の感情を他者に伝えることを活動の目的とすると思い定めたのである。
 おそらくこれからも国際社会がさらなるグローバル化を推進し世界を変革しようとすれば、その努力は 「大いなる徒労」 に帰するであろう。 為すべきは私の世界である 「ローカルの変革」 なのである。 左脳的思考(サイズの概念)に基づいた 「量を求める時代」 は終焉し、次なる右脳的思考に基づいた 「質を求める時代」 が始まるのである。

2021.07.14


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