Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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風鈴は虚空に懸かって妙音を響かせる
 確信の終焉がもたらすものは未来の喪失であり、未来が失われれば、人々は自信なく刹那の狭間にただ漂っているだけの存在となってしまう。
 刹那の狭間とは時間も空間もない刹那宇宙のことであって、過去も未来もない 「現在だけの世界」 である。 刹那宇宙には原因と結果で構成される因果律が存在しない。 すべての出来事は理由なく偶然に発生する。 だがこのような宇宙は視点を変えれば 「理想的な世界」 であるとも考えられる。 そこでは、明日に向かって準備することも、昨日に向かって反省することも必要ない。 すべては一期一会であって、今日のみにて完結しているからである。 風鈴は虚空に懸かって妙音を響かせるのみである。
 それを実在と呼ぶか虚無(ニヒリズム)と呼ぶかは生きる姿勢(スタンス)によって異なる。 だがその構造が1枚の紙のようなものであってみれば、いずれを表とし裏とするかは便宜的である。 しいて言えば気分によるところであろう。

2021.07.08


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