「行動力から表現力への転換」 では、情報社会での 「存在の儚さ」 に喘ぐ現代人の実存性は行動力から表現力への転換によって実現されるとした。 だがその帰結を現代社会と照らし合わせてみるとその乖離の大きさに唖然としてしまう。

　その原因は表現力を構成する手段としての言葉の力や図式の力や音楽の力等々の実効性の低下にある。 それらの手段が 「虚言」、「妄言」、「偽計」 等々で装われている状態では、表現力はその効力を発揮することができず、現代人が抱える 「存在の儚さ」 は、いつまでたっても救われることはない。 存在の儚さが救われるのは、それらの手段が 「真言」、「真理」、「真実」 等々で裏打ちされている場合に限ってのみである。

　世相は今、コロナ禍の中で迫り来る 「東京オリンピック開催」 で上へ下への大騒ぎである。 状況はまさに存在の儚さそのものの様相を呈している。 実存は実現されるのか？ それとも 「大いなる虚構」 と化するのか？ 表現力の真価が問われている。 それはまた、日本人の魂が試される刻でもある。