Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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現れる世界の断象
 失われた世界の対極に 「現れる世界」 がある。 ないと想っていた世界が突如として現れる世界である。 シュレジンガーの波動理論からすれば新たな世界は波動方程式の波動関数を収縮させる観測によってもたらされる。 宇宙の彼方でとある星が観測されると宇宙はその星の周辺まで拡大される。 観測とはたんに眺めるだけでは不足で 「意識的な観測」 でなければならない。 意識的観測とは観測に意味が存在することである。 蛙には申し訳ないが蛙が何事かを眺めたからといって新たな宇宙が現れるものではない。 つまり、波動理論が規定する観測とは意味が内在する多分に 「人間的な観測」 であることが要求される。
 この視点で考えれば宇宙とは多分に 「人間的な存在」 である。 言うなれば 「人間あっての宇宙」 ということになる。 さらに観測の概念を飛躍させれば 「観測とは知ること」 という普遍的な認識に帰着する。 曰く。 新たな世界は何事かを知ることで現れる。
 人気番組となったNHKの 「チコちゃんに叱られる」 での名セリフではないが 「ボーっと生きてんじゃねーよ!」 のごとく、ボーっと生きていたのでは新たな世界は現れない。 人間あっての宇宙とは人間が何事かを知ることがあってこその宇宙ということである。

2019.07.27


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