Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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たかをくくったお調子者の時代
 現代人の 「行状(行い)」 をひとことで表現すれば 「たかをくくっている」 という一言に集約されよう。 不正をはたらこうが嘘をつこうがいっこうに恥じることがない。 恥じるどころか生きるためにはそれが 「容認される」 かのように思っている。 利己的遺伝子に基づく 「自己保存の法則」 もここまでくれば、自己を保存するよりも自己を毀損する方向に作用する。 何より問題なのはそれらの行状を間違いではなく 「正しい」 と考えはじめていることにある。
 「赤信号みんなで渡れば怖くない」 から始まった集団的な思考停止の歩みは 「信義で飯が食えるか」 という経済至上主義の弊害に陥り、自分ファーストの 「強欲資本主義」 に至って倫理観を喪失した 「末人の登場」 をもたらしたのである。
 歴史をふりかえればこのような閉塞状態は過去に幾度かあったではないか、そのたびそれを乗り越えてこられたのであるから 「心配ない」 という人もいようが、それこそ 「たかをくくった」 生き方ということになろう。 それらの危機を救ってきたのは 「人倫」 の力ではなく、多くは 「神の拳」 という力であり、お天道様はみているとする 「天の配剤」 の力であり、天網恢々疎にして漏らさずという 「宇宙の天秤」 の力の為せる業である。
 人倫の世界を囲む宇宙には 「エネルギ保存の法則」 と呼ばれる根源的秩序が内蔵されている。 その大法則からすれば人倫の法則としての 「自己保存の法則」 などその片隅の一部を構成しているにすぎないのである。 エネルギ保存の法則を簡潔に説明すると 「宇宙の万物事象はいかに流転し変遷してもその前後でエネルギの総量は一定に保たれる」 というものである。 前記した 「神の拳」、「天の配剤」、「宇宙の天秤」 等々の力はすべて宇宙内蔵秩序としての 「エネルギ保存の法則」 から導かれるものである。 現代人がこの宇宙の大法則を自覚する限り危機は乗り越えられるように思うが、本末を転倒させてその大法則を人倫に基づいた自己保存の法則で書き換えるようなことになれば人類の命運も 「もはやそれまで」 ということになってしまうであろう。
※)現代の描像とは
 第1320回 で使った 「お調子者の時代」 という現代の描像はここに至って 「たかをくくったお調子者の時代」 というさらなる描像に再編集される。 辛辣このうえない描像ではあるが、もって自省の機会として使用したい。

2019.04.20


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