Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
Turn

天秤を失った社会
 今ほど 真偽、善悪、正誤 の基準となる 「宇宙の天秤」 と 「人倫の天秤」 の乖離が大きくなってしまった時代はかってあったであろうか?
 その原因の多くは情報化時代特有の現象に端を発しているように観える。 情報は時として簡単に捏造されてしまう。 流行の言葉で言えばトランプ米国大統領が多用する 「フェイク」 のようなものである。 今や社会はこのフェイクニュースが激しく飛び交い何が真実なのか直ちには見極めがつかない。 その手筋も巧妙なものから稚拙な言い逃れを含め種々雑多、複雑怪奇であって、その様相は底なし沼のようである。
 今まさに日本と韓国の間で応酬が続く韓国駆逐艦による日本のP3C哨戒機に向けた火器管制レーダー照射事件などは論点が逸脱して開いた口がふさがらない。 科学的な絶対的真理を裏打ちする 宇宙の天秤 などまったく省みることなく 人倫の天秤 の 「歪曲(わいきょく)」 に血眼になっている。
 人倫の天秤は文字通り 「人間の倫理観」 に基づく天秤であるが、その倫理観が、嘘八百を主導し、悪を善に塗り替え、誤りを正しいとうそぶくようでは 「天秤の機能」 などすでにして消失してしまっている。 万物の霊長と尊称されてきた人間にしてこの凋落はどうしたことか? 茫然自失、立ち尽くすのみである。 羅針盤を失った船舶が漂流するがごとく 「天秤を失った社会」 もまたその漂流をのがれることはできないのかもしれない。 進みゆく先には波濤逆巻く大海原が横たわっているというのに ・・・。

2019.01.09


copyright © Squarenet