Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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風鈴は虚空に架かる
 結局、この世に絶対的なものなどは、何ひとつ存在しないように思える。
 すべては相対的であり、何を基準にするかで、一方は白、他方は黒となる。 宇宙は常に相対性の狭間で、右に左に 「ゆらいで」 いるのである。
 相対性の世界で、有効に生きる処世術とは、絶対認識を捨て去ることである。 絶対認識を捨て去ることは、一見不安定のようにも見えるが、実はこの上なく安定した状態である。
 相対認識を基準とした生き方とは、右でも左でもなく ・・ 上でも下でもなく ・・ 善でも悪でもなく ・・ 正義でも不正義でもなく ・・ すべては 「ペアポールの狭間」 である。
 禅で言う 「風鈴は虚空に架かる」 ・・ 風鈴は家の軒先に架かるが、その家は大地(地球)に架かる、しかしてその地球は ・・・ 虚空に架かる。 つまり、何事も確固たるものに架かっているように見えて、実は何ら確固たる頼りになるものなどは、何ひとつないのである。
 我々は確かなものを求め、確かなものを構築しようと、遙かな歴史の時空間を通して苦闘してきたが、いまだ誰かそのようなものを手に入れたとは寡聞にして私は聞かない。
 古人曰く、この世は 「浮き世」 であると ・・・ かく言い得て妙である。

2004.3.18


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