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未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事

信州つれづれ紀行 / 時空の旅
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道と川の駅 / 長野県上田市小泉
岩鼻
 上田から長野に向かう国道18号線の道すがらこの奇岩の岩壁はいつも気にかかっていた。 先日その奇岩のふもとに位置する 「道と川の駅」 のことを知って訪れることにしたのだが、テレビ画面に映ったそこからの奇岩のカットだけが頼りであったために、行きつ戻りつしばらくの試行錯誤を経てようやく行き着いた。 その奇岩の岩壁が 「岩鼻」 と呼ばれていることはそこで知ったことである。 岩鼻の謂われは以下のようである。
 遠い昔は対岸(千曲川を挟んで北側)の塩尻岩鼻とは一続きの岩で上田盆地は当時は一面の湖であったという。 その湖の西にねずみがはびこり田畑を荒らしたので唐猫を集めて追わせたところ、逃げ場を失ったねずみは岩山を食い破り、湖(上田盆地)の水は千曲川となって流れ出し一帯は陸地となったというのである。 ねずみが岩山を食い破ったことから付近には「ねずみ」の地名が残っている。
 道と川の駅がある 「半過公園」 はその岩鼻を望む絶好のビュースポットであるとともに千曲川を見渡せる自然に囲まれた多目的広場となっている。 道の駅と川の駅を合わせた “ 道と川の駅 ” の名乗りは全国ではじめてとのことである。
 岩山をねずみが食い破ったかどうかは別にして千曲川を挟んで対峙する両岸の岩壁を眺めれば千曲川が為した浸食だけではなく、大きな地殻変動によってかくなる大がかりな開削が行われたことは確かなようである。
 よく似た伝説は山を隔てた「松本盆地」にも残されていて、遠い昔は湖(安曇湖)であった松本盆地が犀龍と呼ばれる龍によって岩山が砕かれ犀川となって流れ出し一帯は陸地となったという話である。 (「犀龍と泉小太郎」伝説)
 ねずみが龍に代わっているだけであるが、ねずみが 「囓った」 方がほほ笑ましくもある。 ちなみに 「岩鼻」 の呼び名は岩壁に穿かれた巨大な穴が人間の鼻の穴のように見えるからであるという。 また「道と川の駅」は 「おとぎの里」 と呼ばれている由、言い得て妙である。

2018.06


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