Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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現在とは現象である
 過去も未来も現在に含まれているとする現在とは何か?
 過去と未来のあらゆる可能性を内蔵している現在とは 「可能性の海」 である。 その可能性の海から 「ある場面」 が投影されることで実在としての現在が象出する。 場面構築(投影)のメカニズムについては 第211回 「直観的場面構築」 で以下のように書いている。
 直観的場面構築とは顕在意識や潜在意識で構成された広漠茫洋たる 「意識の大海」 に蓄積されていた玉石混淆、種々雑多なさまざまな断片的認識要素(断片的記憶要素)が、ある瞬間に連鎖関連して(連鎖反応して)意識のスクリーンに投影する 「直観的場面」 である。 はなはだ難解な表現であるが、「連想ゲーム」 を思い浮かべてもらえばよい。 ばらばらに意味なく存在していた言葉が、ある瞬間にまとまりをもち 「何事か」 を語りだすのである。
 以上の直観的場面構築で語られている 「意識の大海」 とは現在を象出させる 「可能性の海」 そのものである。 つまり、可能性とは 「意識の可能性」 のことである。 その意識の可能性から実在としての現在が生まれてくるのである。
 ニールス・ボーアの弟子にしてアルベルト・アインシュタインの共同研究者でもあったジョン・アーチボルト・ウィーラー(米1911〜2008年)は 「詩心をもった物理学者」 であった。 「ワームホール」 や 「ブラックホール」 の命名者としても知られている。 ウィーラーは 「現実はすべて物理的なものではないかもしれない」 と問題提起した最初の物理学者である。 我々の宇宙は 「観測行為と意識を必要とする参加方式の現象かもしれない」 というのである。 つまり、「宇宙とは現象である」 と。
 ウィーラーの 「宇宙とは現象である」 とする提示は直観的場面構築のメカニズムを裏打ちするとともに、可能性の海である意識の大海からの 「現在の象出過程」 を語っているかのようである。 そう 「今の今である現在とは現象である」 と。

2018.07.12


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