Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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永遠の生命〜兜率天への道
 即身ということ。 生きるということ。 空海の探求は遠大なループを描いてついに宇宙の源泉にたどり着き 「永遠の生命」 を獲得した。 そうであれば空海にとっては現世にいようがいまいがそう重要なことではなかったに違いない。 以下の事蹟がそのことを物語っている。
 生涯を代表する大作となった 「秘密曼荼羅十住心論」 と 「秘蔵宝鑰」 を書き終えた空海はその5年後、62歳で高野山に入定(入滅)している。 入定に先だち空海は 「私は兜率天へのぼり 弥勒菩薩の御前に参るであろう そして56億7000万年後 私は必ず弥勒菩薩とともに下生する」 と弟子たちに遺告する。 弥勒菩薩とは釈迦の弟子で死後、天上の兜率天に生まれ、釈迦の滅後、56億7000万年後に再び人間世界に下生し、出家修道して悟りを開き、竜華樹の下で三度の説法を行い、釈迦滅後の人々を救うといわれている菩薩である。 空海は若き日より兜率天の弥勒菩薩のもとへ行くことが生涯の目標であったのである。
 56億7000万年などという時間を身のうちに内蔵することなど常人の為せることではない。 だが即身で永遠の生命を獲得した空海であってみれば、それは 「1日の出来事」 であったにちがいない。

2018.06.04


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