Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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意識制御の流儀
 現代人の最も重要かつ喫緊の課題は「意識のコントロール」である。 自らの意識をもって過去・未来を創りだした生物は唯一人類だけである。 人類にとってはその意識の発達が毛皮と牙に代わる最強の武器となったわけであるが、その意識が今度は逆に人類にとっての大いなる災いをもたらそうとしているのである。
 無制限な自由意思の横溢はそのコントロールがなされなければ日常生活を混乱に陥れ、しいては破綻させてしまう。 科学的合理主義は人間の外に広がる物質的環境を多いに改善し豊かなものに変えてはくれたが、その一方で内に広がる意識的環境にはまったくと言っていいほどに無頓着であった。 本来であれば、物質的環境の変化にともなって意識的環境もまた同等に変化しなければならなかったわけであるが、その対応が立ち後れたために、大きな格差(溝)を発生させてしまったのである。
 勿論。 意識的環境を整えるための心理学や哲学等々の改善も試みられてきたのであるが、その論ずるところは婉曲的複雑怪奇であって物質的環境の狭間で煩悶する現代人を安息に導いてはくれていない。 もっともそれを打ち破る単純明快な論も登場したが、オーム真理教の顛末のごとく極端な意識コントロールであっては何の解決にも至らない。
 求められているのは明日を拓く高純度の意識コントロールである。 それは自らの意識をもって自らに語りかけることで自らが 「かくある」 と自得する以外に他に道はない。 高貴高尚な心理学や哲学であっても、その言うところが自らを救うことができなければ、何の意味も生じないのである。 畢竟。自らにふさわしい 「意識制御の流儀」 は自律した自らの意識からしか生まれないということである。

2018.05.14


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